2024-03-18
日本の埋立地はどのようにしてつくられている?
日本の埋立地は海洋土木工事で作られています。国民の生活や国土を広げる目的のためです。しかしその背景には自然環境への負の影響もあります。
今後の埋立事業はこれからの世代に引き継ぐ大きな課題のひとつです。海洋土木工事で、どのように埋立地が作られ、その際に自然環境はどのように影響を受けるのか、過程を見ながら考えてみませんか。
この記事では以下のような内容をご紹介しています。
埋立地とは?
埋立地とは、海や湖沼、河川などの水面を土砂で埋め立てて造成した土地のことを指します。日本では、沿岸部の浅海域で埋立が行われることが多く、港湾や工業用地、空港、住宅地などに利用されています。
埋立地には、海底の軟弱な地盤を、土砂の投入や地盤改良により固めて安定させたり、外周に護岸を築造し、埋立土砂の流出を防ぐとともに、波浪から埋立地を保護する効果があります。
日本の埋立地の歴史
東京湾の埋立地が自然と頭に浮かぶ方が多いと思われますが、日本における埋立の歴史は古く、奈良時代には、大阪湾の難波津(現在の大阪市)で小規模な埋立が行われていたとされています。
江戸時代には、長崎の出島や横浜の外国人居留地などが埋立地に建設されました。しかし、本格的な埋立事業が始まったのは、明治時代以降のことです。
1899年に制定された「築港法」により、港湾の整備が国家的事業として位置づけられ、各地で埋立による港湾建設が進められました。
東京の築地や横浜の山下公園、神戸の新港(ハーバーランド)などは、この時期に造成されました。
第二次世界大戦後は、高度経済成長とともに埋立事業が加速し、工場用地や住宅地が開発されました。都市機能の拡充や物流拠点の整備を目的とした埋立事業も活発化しました。
そして東京湾の臨海副都心(お台場、有明、豊洲など)や横浜みなとみらい21、大阪湾のポートアイランドや咲洲、中部国際空港や関西国際空港など、大規模な人工島の建設が相次ぎ、現在に至っています。
埋立地が必要とされる理由
日本で埋立地の造成が盛んに行われてきた背景には以下の4つが挙げられます。
国土の有効活用
日本は国土の約7割が山地であり、平野部が少なく、人口や産業の集中する都市部では、慢性的な土地不足に悩まされてきました。
海域を埋め立てて新たな土地を創出し、国土の有効活用としたのです。
産業振興と経済発展
埋立地に建設された港湾施設は、工業用地や物流拠点として利用されることが多く、地域の産業振興と経済発展に寄与してきました。
廃棄物処分場の確保
日本では、経済成長とともに廃棄物の排出量が増加し、最終処分場の確保が大きな課題です。海面を埋め立てて廃棄物処分場を整備し、陸上の処分場の逼迫を緩和する手段としています。
防災・減災対策
埋立地は、高潮や津波、洪水などの自然災害に対する防護機能があります。海岸線に築造された埋立地を守る護岸は、背後地を波浪から守る防波堤の役割を果たしています。
河川の河口部に建設された埋立地は、洪水の氾濫を防ぐ遊水地としても機能しているのです。
埋立地の造成プロセス
海洋土木工事で埋立地が、実際に作られる過程を説明します。
海洋土木工事で、埋立事業を始める前には、事前調査と設計を行います。対象海域の地形や地質、海象条件、環境への影響などを詳細に調べ、埋立計画を立案します。
護岸の構造や必要な土砂量、地盤改良の方法などを検討し、設計図を作成します。これをもとに埋立地の配置や規模、護岸の設計、施工手順などが決定されます。
埋立地の外周には、埋立土砂の流出を防ぐとともに、波浪から埋立地を保護するための護岸が築造されます。
護岸が完成すると、埋立用の土砂を投入して埋め立てを行います。投入された土砂は、ブルドーザーやバックホウなどの重機を用いてならし、締め固めが行われます。
埋立地の地盤高を管理しながら、徐々に盛り上げていきます。埋立地の地盤は、一般に軟弱で沈下が生じやすい特性があります。そのため、地盤の改良や沈下の対策も行ってから完成となります。
埋立地開発に伴う課題と対策
埋立地の開発は、国土の有効活用や産業振興、都市機能の拡充などに貢献してきた一方で、自然環境への影響に対する課題を抱えています。
埋立地が与える海への影響
大規模な埋立事業は、埋立に伴う濁りの拡散や、護岸による潮流の変化などが、海洋環境を悪化させ、海の生物の生態系を変えてしまう恐れがあります。
埋め立てにより、海の干潟や藻場、サンゴ礁などの貴重な自然環境が失われていることも事実で、海の自然環境を変えているとして問題視されているのです。
これらの問題や課題に対しては、生物の生息環境を保全するための人工干潟や藻場を作る、濁りの拡散を防止するための汚濁防止膜を設置するなどの対策や、継続した環境モニタリングが行われています。
廃棄物処理場として利用される埋立地
弊社では、廃棄物処分場として利用される埋立地の、維持管理を行う防食工事を、多く施工しています。
日本の埋立地は国の発展を支えています。ただ、廃棄物処理場は受け入れ量の増加と、処分場の残余容量の減少という大きな課題を抱えています。
特に、大都市圏では、最終処分場の確保が困難になりつつあります。この問題に対しては、廃棄物の発生抑制や再資源化を進め、最終処分量を削減していくことが重要です。
リサイクルの推進や、廃棄物の高度処理技術の開発・普及などが求められます。
国の発展を支えている日本の埋立地
日本各地には、海洋土木工事で建設された埋立地が存在します。ここでは、代表的な埋立地をいくつか紹介します。
東京湾の埋立地
東京湾岸には、東京都や千葉県、神奈川県にまたがる大規模な埋立地が広がっています。
東京港には、お台場海浜公園があり、有明・豊洲地区、京葉港には幕張新都心が作られ、横浜港にはみなとみらい21地区が存在します。
これらの埋立地は、都市機能の拡張や産業振興、ベイエリアの再開発などを目的に建設されました。
大阪湾の埋立地
大阪湾岸にも、広大な埋立地が存在します。大阪港の咲洲には、大阪市の新都心として、ビジネスパークや国際見本市会場、ショッピングモールなどがつくられました。
舞洲には、スポーツ・レクリエーション施設や廃棄物処分場、太陽光発電所などが建設されています。堺2区には大規模な工業団地が造成され、国内外の企業が進出しています。
中部国際空港と関西国際空港
伊勢湾と大阪湾には、日本を代表する中部国際空港と関西国際空港のふたつの海上空港が大規模な工事により建設されました。
両空港とも、24時間運用が可能な国際拠点空港として、国内外の航空ネットワークの要となっています。
その他の主要な埋立地
日本には、他にも数多くの埋立地が存在します。北海道の石狩湾新港、宮城県の仙台港、福岡県の北九州空港や博多港、沖縄県の那覇空港などが代表例です。
これらの埋立地は、地域の物流や産業、観光などを支える重要なインフラとして機能しています。
まとめ
日本の埋立地は、国土の発展と都市の形成に大きく貢献してきました。しかし同時に、環境への影響や防災上の課題など、克服すべき問題も抱えています。
これからの海洋土木工事による埋立地開発には、環境と経済の調和を図り、持続可能な発展を実現していくことが求められます。
環境アセスメントの実施や、生態系の保全・再生、再生可能エネルギーの導入など、環境と共生する取り組みが不可欠となるでしょう。
国や自治体、事業者だけでなく、市民一人ひとりが、環境と調和した埋立地のあり方を考え、その実現に向けて協力していくことが大切です。
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