2025-04-30
海洋土木で使用するプレキャスト工法とは?特徴とメリット・デメリット

海洋建設で近年注目を集めている「プレキャスト工法」をご存じですか?品質の安定や高耐久性、工期の短縮、コストダウンといったメリットがあり、今後拡大されることが想定されています。 一方で、輸送コストや設置の難しさといったデメリットも存在します。
この記事では、「プレキャスト工法」の全体像を分かりやすく解説し、現場で構造物を完成させる「現場打ち工法との違い」や、それぞれの具体的な活用事例も交えながらメリット・デメリットを比較検討していきます。
この記事を読むことで、海洋建設におけるプレキャスト工法の可能性やプレキャスト工法の理解を深めることができるでしょう。
この記事では以下のような内容をご紹介しています。
プレキャスト工法とは?
プレキャスト工法とは、工場やヤードなどの建設現場で使用する構造物の部材(コンクリート部品など)を、あらかじめ工場などの別の場所で製作して、現場で組み立てる工法のことです。
建物を構成する柱や梁、壁、床版などをあらかじめ工場で製造し、現場でそれらをクレーンなどで吊り上げて接合するため、工期短縮や品質向上に役立ちます。
海洋建設においては、ケーソンや消波ブロック、桟橋などの構造物がプレキャスト工法で製造されています。
プレキャストコンクリート(PC法)
プレキャスト工法は、「プレキャストコンクリート工法(PC工法)」あるいは「プレキャストコンクリート(PC)」と呼ばれることもあります。
コンクリート以外にも、鋼材や木材などを用いたプレキャスト工法も存在しますが、海洋建設ではコンクリート製の部材が用いられることが一般的です。
特に、鉄筋コンクリート(RC)やプレストレストコンクリート(PSC)が多く使用されます。プレストレストコンクリートは、あらかじめコンクリートに圧縮力を加えることで、強度や耐久性を高めます。こうすることで、より大きな荷重に耐えることができ、海洋環境の厳しい条件にも対応することが可能になります。
橋梁工事にも採用されている
プレキャスト工法は、橋梁工事でも広く採用されています。
橋桁や橋脚などを工場で製造し、現場で架設することで、工期の短縮や交通規制を最小化することができます。海洋建設における桟橋や橋梁の建設にも、このプレキャスト工法が活用されています。
※橋梁工事の詳細は「橋梁工事とは|種類や施工方法を紹介」をご覧ください。
プレキャスト工法と現場打ち工法との違い
港湾・護岸・橋梁などの海洋建設において、コンクリート構造物を構築する方法は、主に「プレキャスト工法」と「現場打ち工法」の2種類に大別されます。
それぞれに特徴があるため、状況に応じて使い分けられています。ここでは、両工法の違いを解説すると共に、それぞれのメリット・デメリットを比較することでプレキャスト工法の理解を深めていきましょう。
プレキャスト工法の特徴
プレキャスト工法は、品質管理の徹底された環境下で製作されるため、高い精度と均一な品質を確保できます。また、天候に左右されにくいため、工期短縮にも繋がります。
現場打ち工法の特徴
一方、現場打ち工法は、建設現場で型枠を組み、そこにコンクリートを流し込んで構造物を構築する伝統的な工法です。
現場の状況に合わせて柔軟に対応できるというメリットがありますが、天候の影響を受けやすく、工期が長引く可能性も考慮しなければなりません。
両工法の比較
両工法のメリット・デメリットを比較することで、それぞれの特徴がより明確になります。
項目 | プレキャスト工法 | 現場打ち工法 |
---|---|---|
特徴 | 工場で部材を製造し、現場で組み立てる工法 | 現場で型枠を組み、コンクリートを打設する工法 |
工期 | 天候に左右されないため、工期を短縮しやすい | 天候などに左右され工期が長くなる可能性がある |
コスト | 部材の輸送コストがかかる | 型枠工事のコストがかかる |
天候の影響 | 受けにくい | 受けやすい |
設計の自由度 | やや制限される | 比較的自由 |
騒音・振動 | 少ない | 大きい |
このように、プレキャスト工法と現場打ち工法を比較してみると、それぞれのメリット・デメリットがわかります。
プレキャスト工法は、品質の安定性や工期の短縮といったメリットがある一方で、輸送コストや大型クレーンの必要性といったデメリットも存在します。そのため、プロジェクトの規模や特性、周辺環境などを考慮した上で、適切な工法を選択する必要があります。
港湾・護岸・橋梁などでの活用事例
プレキャスト工法は、その特性から様々な海洋建設で活用されています。
例えば、港湾ではケーソンや消波ブロック、護岸では護岸ブロック、橋梁では橋桁などに用いられています。
現場打ち工法は、大規模な構造物や複雑な形状の構造物の構築に適しています。ダムやトンネル、地下構造物などに用いられています。
プレキャスト工法のメリット・デメリット
メリット
プレキャスト工法のメリットは、工場生産による品質の安定性、工期の短縮、そして現場作業の省力化です。これらは、全体的なコスト削減にも繋がります。
また、近年では環境負荷低減の観点からも注目されており、持続可能な社会の実現に貢献する技術として期待されています。
デメリット
一方、デメリットとしては、大型部材の輸送コストやクレーンなどによる設置作業の制約が挙げられます。
また、部材同士の接合部の設計や施工には、高い精度が求められます。しかし、これらの課題も技術の進歩により克服されつつあるため、プレキャスト工法の適用範囲はますます広がっています。
まとめ|海洋建設におけるプレキャスト工法の可能性
「プレキャスト工法」は、工場で部材を製造して現場で組み立てる工法なため、従来の「現場打ち工法」に比べて、工期の短縮、品質の向上、安全性の向上といったメリットがあり、海洋建設の分野でも注目を集めています。
特に、港湾施設や護岸工事、橋梁下部工など、大規模かつ複雑な構造物を必要とする現場での活用が進んでいます。
また、現場での作業が簡素化されるため、コスト削減にもつながります。さらには、工場で作業を行うことで、現場での騒音や振動を低減し、周辺環境への負荷を軽減できるというメリットもあります。
一方で、大型部材の輸送や設置に課題が残ります。大型クレーンや特殊車両が必要となる場合もあり、輸送ルートの確保や設置作業の安全性に配慮が必要です。
また、部材同士の接合部の品質確保も重要です。
しかし、これらの課題は、技術の進歩や施工計画の工夫によって克服できる可能性が高いため、海洋建設において「プレキャスト工法」は、重要な役割を担っていくことでしょう。今後の発展が期待されています。
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