2024-07-01
藻場の種類や役割とは
海面下の海の森とも呼ばれる「藻場」についてご存知ですか?最近では、藻場が減少していることが問題になっており、環境保全の取り組みが行われています。
海洋土木工事では、海洋環境における建設やインフラ整備を行いますが、防波堤や護岸、港湾構造物の管理、建設なども行い、その仕事の範囲は多岐にわたります。
その中で、藻場の保護や再生という環境保全の仕事も担っています。海洋土木と藻場の環境保全の関わりについてご紹介します。
この記事では以下のような内容をご紹介しています。
海洋土木、海洋建設の仕事とは?
海洋土木工事がどのように藻場に関わっているか説明する前に、海洋土木や、海洋建設ではどのような仕事を行っているのか説明します。
その仕事内容を理解すると、海洋土木や海洋建設が、藻場とどのように関わりがあるかわかりやすいためです。
海洋土木や海洋建設工事は、海洋環境における建設やインフラ整備を行います。その仕事は多岐にわたります。以下に代表的な事例を4つ挙げます。
港湾施設の建設
海洋土木の仕事には、港湾施設の建設があります。船舶の停泊、荷物の積み降ろし、乗客の乗降を行うための施設「港」や「ドッグ、船舶が接岸するための「埠頭」や「桟橋」などの建設を行ないます。
防波堤や護岸の建設
防波堤や護岸の建設にも関わります。波の衝撃を吸収・遮断し、港湾や沿岸地域を保護するための「防波堤」、海岸侵食を防ぎ、沿岸地域を保護するための「護岸」などの建設を行ないます。
海底トンネルや橋の建設
海底トンネルや橋の建設では、交通や輸送のために使用される海中に掘削されたトンネル「海底トンネル」や島と島、本土と島などを結ぶ橋「橋梁」などの建設を行ないます。
海洋構造物の建設
海洋構造物の建設では、石油やガス採掘のための構造物「海上プラットフォーム」や再生可能エネルギーの一環として設置される「洋上風力発電設備」などの建設を行います。
このように、海洋土木や海洋建設の仕事は、海洋環境の構造物の建設やインフラ整備に大きな役割を持っています。そして、さらには、環境保全という大きな使命をも担っているのです。環境保全の取り組みの中に、藻場の生産があります。では、藻場と海洋土木や海洋建設の関わりについて説明します。
港湾と藻場
海洋土木工事の中に、港湾工事がありますが、この港湾はわたしたちの生活の場の一部です。港湾には、防波堤や、干潟、海岸がありますが、そこには多くの生物が暮らしています。
その生物が、わたしたちの生活を支えています。その生物を育むひとつの場所に「藻場」があります。藻場は私達の生活に様々な恩恵をもたらしています。
近年表面化しているのが「藻場の減少」という問題です。高度成長期の沿岸域開発により、藻場は大幅に減少しました。
原因として、埋立、透明度の低下、化学物質の流入、海水温の上昇や海水の汚染、ウニなどの食害が要因とされる磯焼けなどが挙げられます。
特に瀬戸内海では30年間でアマモ場が7割も減少したとも言われます。藻場の減少は、先に触れた藻場が果たす役割を減少させることにつながります。つまり、
- 水質の浄化 → 水質の汚染
- 生物多様性の維持 → 生物多様性の減少
へとつながる環境破壊と同義の現象が起こることを意味するのです。
藻場とは?
藻場とはひと言でいえば「藻が茂る場所」を意味します。藻場が「海の森」と呼ばれる所以は地上の「森」と同様、私たちの生活にさまざまな恩恵をもたらしてくれるからです。以下の4つが藻場の役割とされているものです。
①水質の浄化
②生物多様性の維持
③二酸化炭素(Co²)の吸収
④侵食抑制による海岸保全
藻場の種類
そして、自然と水産資源に恵まれた日本の沿岸域には、さまざまなタイプの藻場が存在しています。代表的な藻場は以下の4タイプです。
アマモ場
波の静かな内海・内湾域の砂泥域に繁茂する海草のアマモやコアマモなどから構成される藻場で、産卵場や幼稚魚の保育場を提供する役割を果たしています。
アラメ・カジメ場
黒潮(暖流)の影響を受ける沿岸域に生育するアラメ属とカジメ属の海藻類から構成される藻場。岩礁に着生して繁茂し、アワビやサザエ、ウニなどの餌ともなります。
ガラモ場
対馬暖流の影響を受ける沿岸域や瀬戸内海に生育するホンダワラ属の藻場は、多数の卵形の気泡を持ち、海中で立ち上がりながら岩場に着生して繁茂します。
これにより、メバルなどの魚類のたまり場や産卵基質、稚魚の成育場として重要な役割を果たします。また、ちぎれた藻は流れ藻となり、海流に乗って稚魚などの隠れ家となります。
コンブ場
親潮(寒流)の影響を受ける北方域の藻場は、主にコンブ類から構成されています。これらのコンブ類は岩礁に着生し、繁茂しており、古くから食用として利用されてきた欠かせない海藻です。
日本の沿岸に分布するコンブ属の海藻は13種が知られていますが、マコンブ、ホソメコンブ、ミツイシコンブ以外はすべて北海道沿岸の固有種です。
海草と海藻の違い
余談ですが、海草と海藻の違いを知っていますか? 海草とは、アマモなどの海産種子植物のことで、海中で花を咲かせ種子で繁殖し、一生を海中で過ごします。
主に浅い場所に生育し、海底深くにはあまり見られません。一方の海藻は、胞子で繁殖する海中の藻類です。根は栄養吸収のためではなく、岩に固着するためのものです。
海藻は葉色で緑藻、褐藻、紅藻の3種類に分かれます。世界には約2万種の海藻があり、食用にされるのは主にコンブなどの褐藻で、約50種程度といわれています。
これらの藻場が失われないよう海洋土木の現場では藻場生産の役割を担っています。
藻場づくりの必要性
港湾がわたしたちの生活に密着した産業の役割を担いながら、持続的に発展するためには、自然との共生、環境保全が不可欠となります。
海洋土木が掲げる環境保全というミッションには、自然環境の持続可能な管理と保護、そして復元を目的とし、水質、土壌、動植物の生態系の保護、資源の持続可能な利用だけでなく、人々の健康と幸せをも含んだものでなければなりません。
藻場の減少という問題への取り組みの一貫として海洋土木が取り組んできたのが、藻場造成機能を付加した自然調和型沿岸構造物の整備でした。
自然調和型沿岸構造物の整備は、自然環境と調和しながら、沿岸開発の両立を図ることを目的としたものでしたが、この構造物においても基質の経年劣化や水温上昇などにより、藻場造成効果が失われている現状があります。
この構造物の管理を継続していくことが藻場の再生と存続にかかっており、これも海洋土木が関わる大切な環境保全の仕事のひとつになっています。
まとめ
私たちが普段あまり目にすることのない海中には、私たちの生活と密接に関わる世界があり、多種多様な動植物がいます。
その世界の礎ともいえるインフラの構築、整備、復元は海洋土木が担うべき大きな役割でもあるのです。
環境保全、防災対策、持続可能な開発、そして経済発展という4つの使命を達成すべく、海洋土木や海洋建設に携わる人々の知られざる挑戦が、今日も海の現場では繰り広げられているのです。
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