2023-02-27
港湾鋼構造物の防食技術。一般的なコンクリート防食とは逆ってどういうこと?
港湾鋼構造物の防食とは?
港湾鋼構造物の防食とは、その名前の通り、港湾、つまり水に浸かっている鋼材を腐食から守るための技術です。
当サイトの防食工事のページでも紹介していますが、大きく分けて、電気防食工法と被覆防食工法の2つに分かれます。
この記事では以下のような内容をご紹介しています。
電気防食工法
電気防食工法とは、海水中の鋼材に対し、アルミニウム合金陽極などの電極から防食電流を供給し腐食電流を消滅させて鋼材を腐食から守る方法です。
電気防食工法には、流電陽極方式と外部電源方式があります。
流電陽極方式は、メンテナンスや施工が比較的容易で、陽極寿命を任意に設定可能だったり、電源のない場所でも使えるというメリットがありますが、河川等の高抵抗率環境には適さなかったり、防食電流の調整が不可で陽極が寿命に達した時には更新が必要というデメリットもあります。
外部電源方式は、その名前のとおり、外部電源を必要とするので、電源のない場所では使えなかったり、常に電流を流すため、電力費を必要とするデメリットがありますが、出力電圧が任意で調整可能で、高流速下、河川水混入環境下など変化の激しい特殊な環境でも使えるというメリットがあります。
海洋建設において現在主流となっているのは流電陽極方式ですが、この方式では陽極材を水中溶接で取り付ける作業が必要で、高い水中溶接の技術が必要です。
通常、電気防食工法は水中に浸かりっぱなしの鋼材に対して使用されます。
被覆防食工法
被覆防食工法とは、鋼材を覆い隠して、腐食反応に必要な水と酸素の両方を物理的に遮断することで腐食を防ぐ方法です。
被覆防食工法の種類としては、ペトロラタム被覆工法や、水中硬化形ライニング工法、型枠コンクリートライニング工法などの工法があります。これらは、現地被覆とも呼ばれ、工場ではなく、実際の現場で鋼材を覆う作業をします。
現地被覆に対して工場被覆という方法があります。これは名前の通り、工場で材料に被覆処理を行うもので、現場での作業が減るメリットはありますが、補修工事などでは使えないというデメリットがあります。
ペトロラタム被覆工法は、既設構造物では最も実績がある工法で、低級な下地処理で施工が可能で、施工に特殊な機械を必要としない利点があります。期待耐用年数は30年程度と言われています。
水中硬化形ライニング工法は、部分補修が容易で、複雑な形状にも施工ができますが、期待耐用年数は 20年程度と他の工法よりやや短いです。
型枠コンクリートライニング工法も、ペトロタラム被覆工法同様に、低級な下地処理で施工ができます。 コンクリートという強アルカリ性による防食と同時に、耐衝撃性が期待できる工法で、期待耐用年数も30年程度です。
通常、ライニング工法は潮の干満などで空気中に出たり水に浸かったりする場所や、水に入ることはなくても水しぶきが飛ぶ範囲(飛沫帯)に用いられます。
一般的なコンクリート防食とは?
コンクリート防食とは、簡単に言うとコンクリートの劣化を防ぐための工法を指します。
コンクリートを守るために防食塗料を塗ったり、ライニングによって防食処理を行います。
港湾鋼構造物の防食と一般的なコンクリート防食が『逆』ってどういうこと?
これは、コンクリート「を」守るか、コンクリート「で」守るかの違いです。
一般的なコンクリート防食が、コンクリートの劣化を防ぐのに対して、例えば港湾鋼構造物の防食の一つの方法である、型枠コンクリートライニング工法では、鋼材をコンクリートで覆って、鋼材を守ります。
つまり、港湾鋼構造物の防食でコンクリートを用いる場合は、コンクリートを犠牲にして、中にある鋼材を守る。という形になるので、一般的なコンクリートを守るための防食とは「逆」の状態になるのです。
まとめ・港湾鋼構造物の防食の重要性
今回は港湾鋼構造物の防食の方法の違いやその特性、一般的なコンクリート防食との違いについてご紹介しました。
港湾鋼構造物は、常に海水に浸っていたり、海水の飛沫が直接掛かる場所に設置されていますが、中でも特に常に飛沫がかかる状態の範囲の腐食速度が一番高いと言われています。
橋の橋脚などは当然、防食処理が重要ですが、過去には、陸と海の境界で陸面を支えていた鋼板が腐食して小さな穴が空いたことで、時間をかけて中の土や砂が海中に流出して、道路の下が空洞化。そこに大型車両が乗り、陥没して車両が穴に落ちて大事故になった例もあります。
このように、港湾鋼構造物の防食は、当たり前の日常を守るための欠かせない重要技術であると言えるのです。
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