2024-07-08
橋梁の構造、種類、基礎知識について
橋梁(きょうりょう)は、橋といわれるものの総称ですが、海洋建設で扱う壮大な構造物のひとつです。その構造物の偉大さは、昔から集積された技術により、大地震に耐えたり、古くから現存していたりする点にあります。
私たちが普段何気なく利用している橋梁ですが、橋梁は、古の時代から今も人と人との交流においては必要不可欠なものです。
人の作る構造物として高い技術が集積した橋梁について、基礎知識を掘り下げながら、その重要性について改めてご紹介したいと思います。
この記事では以下のような内容をご紹介しています。
橋梁とは?
橋梁とは土木工学の専門用語であり、私たちが普段「橋」と呼んでいるものを指します。
橋梁(きょうりょう)という言葉は、「デジタル大辞泉」では、河川・渓谷・運河などの上に架け渡し、道路・鉄道などを通す構築物。橋。とされています。
橋梁の主な目的としては次のものがあります。
交通・移動の確保
車両、鉄道、歩行者、自転車などの交通手段を川や渓谷、道路、鉄道などの障害物を越えて移動させるために使われます。
経済活動の促進
地域間の物流や人の移動を円滑にし、経済活動を活性化させます。これにより商業、観光、通勤・通学などが促進されます。
緊急時のアクセス
災害時や緊急時に迅速に移動できるようにするための重要なインフラとしての役割を果たします。
地域の交流
橋梁は異なる地域を物理的に結びつけることで、コミュニケーションの促進を図る役割を果たします。これにより、文化的、社会的な交流が促進されます。
このように橋梁は、過去から現在に至るまで交通・移動の確保、経済活動の促進、緊急時のアクセス、地域の交流などの重要な役割を果たしており、人々の生活においてまさに不可欠な存在といえるのです。橋梁の重要性が理解できたところで、次はその構造について見ていきましょう。
橋梁の構造
橋梁の構造について説明します。橋梁は構造的には「上部構造」と「下部構造」のふたつに分類することができます。人、車両などを支える路面部分より上を上部構造、その上部構造を支える部分が下部構造です。
上部構造とは
上部構造は、橋梁の上に位置する直接交通を支える部分。後述する橋の種類によって形成される要素が異なりますが、次のものが主に含まれます。
橋桁(はしげた)
車両や歩行者が通行するための水平な部分です。材料には鋼、コンクリート、木材などが用いられます。
主桁
橋桁を支える主要な構造部材で、橋の全長にわたって設置されます。
床版
上部構造の中で通行する車や歩行者などを面的に直接支えている部分のことを指します。
下部構造とは
下部構造は、橋梁の基礎を支え、上部構造からの荷重を地盤に伝える部分です。具体的には次の要素が主に含まれます。
東日本海洋建設は、特に橋梁の橋脚部の調査や防食工事において数多くを施工しております。
橋脚(きょうきゃく)
橋の中間部を支える垂直な構造物で、上部構造からの荷重を地盤に伝えます。コンクリートや石材、鋼製のものがあります。
橋台(きょうだい)
橋の両端に位置し、橋桁を支える部分です。
基礎
橋脚や橋台を支えるために地中に設置される部分。地盤の安定性を確保し、荷重を地盤に均等に分散させます。
橋梁の種類とその名を轟かせる橋梁
橋梁の重要性が理解できたところで、次はその構造について見ていきましょう。構造はその構造から次の6つに分類することができます。
また、分類した橋梁について、現存する橋梁の例を挙げるものの中には、その素晴らしさや偉大さから名を轟かせているものもあります。
桁橋(けたばし)
橋脚と橋脚の間に一つの桁を渡す構造で短い橋に利用されることが多い橋です。現在、日本における橋の8割近くが桁橋といわれています。
トラス桁橋(トラスげたきょう)
三角形のフレーム(トラス)を用いて荷重を分散させる構造で、鉄道などに利用されることが多い橋です。
アーチ橋
梁(アーチ)を主な構造とする橋です。1673年につくられた、山口県岩国市の「錦帯橋(きんたいきょう)」は、国指定の名勝であり、日本を代表する木造橋です。 木組みの技法という技法で作られており、反り橋となっている構造は、現代の橋梁工学の視点で見ても日の打ちどころがないと言われています。
1634年につくられたとされる、長崎県長崎市の「長崎の眼鏡橋(めがねばし)」は、日本三大名橋に数えられる現存最古のアーチ橋で、川面に映る影が、双円を描くことからそう呼ばれるようになり、国指定重要文化財として現存しています。
ラーメン橋
橋桁と橋脚が一体化した構造で、都市部や高速道路の高架橋などの用途で利用されることが多い橋です。
斜張橋(しゃちょうきょう)
塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を支える構造で、本牧ふ頭と大黒ふ頭を結ぶ「横浜ベイブリッジ」や大黒ふ頭と扇島間の鶴見航路を結ぶ「鶴見つばさ橋」は日本を代表する斜張橋です。
吊り橋
主塔とケーブルでデッキを吊り下げる構造で、兵庫県神戸市と淡路島の間の明石海峡に架かる「明石海峡大橋」は橋長3,911mを誇る世界最大級の吊り橋です。飛行機からも見えるその圧倒的な存在感は、見た人を魅了する壮大な建造物として有名です。
橋の種類を挙げた中には、有名な橋がいくつかありましたが、近くに行かれた際にはぜひご覧になると、昔から橋梁づくりに関わってきた人たちの偉大さを肌で感じることができるかもしれません。
海洋建設と橋梁との関わり
橋梁の基礎知識や構造、種類について見てきましたが、橋梁の建設において海洋建設のノウハウが不可欠であることは言うまでもありません。
河川や海峡を跨ぐ橋梁の建設は地理的な制約だけでなく技術的な制約にも直面することが多く、海洋環境に特化した技術と工法が求められます。
そのなかでも「ケーソン工法」は、海洋建設において重要な役割を果たします。「ケーソン」は内部が中空の鉄筋コンクリート製の巨大な箱状構造物のことで、防波堤や橋梁の基礎、海上空港やトンネルの建設などで用いられます。
弊社のケーソン工法についてはこちらの記事もご覧になれます。
ケーソン工法はフランスで開発され、パリのエッフェル塔やニューヨークのブルックリン橋など、欧米の橋梁基礎や建築物の基礎に数多く採用された工法です。
日本では1923年(大正12)に起きた関東大震災による復興事業で永代橋の再架橋でケーソン工法が初めて採用されました。
永代橋の両岸は埋立地で地質も悪かったため、日本初となるケーソン工法が採用されたのです。ケーソン工法はその後日本で拡大し、同工法が採用された新潟市の萬代橋は1964年(昭和39)の新潟地震で被害をほとんど受けませんでした。
近年は鋼とコンクリートの合成構造形式で、経済性と施工性を高めたハイブリッドケーソンが主流となってきています。弊社でのケーソン工法でも、ハイブリットケーソンを主流とした構造物を用いています。
ケーソン工法は橋梁建設の中核的な技術として活用され、安全性と耐久性の高いインフラの構築に寄与しています。
まとめ
普段、私たちが何気なく利用する橋梁の重要性は、長い年月を経て刻まれてきた歴史そのものともいえます。
現存する橋梁がその証拠として、今日も静かに佇んでいます。橋梁は、単なる交通インフラにとどまらず、社会全体の発展や安全、文化的な意味でも重要な存在です。
そしてその設計、建設と維持管理に、海洋土木が深く関わり、人々の生活に欠かせないインフラを支えています。
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